宗教について 〜 人の生と死を考える 注75'

公開: 2023年5月23日

更新: 2023年5月23日

注75'. 文化進化論

19世紀にダーウィンが生物の「進化論」を発表して、様々な研究分野に影響を与えました。そのような研究分野の一つに、新しい文化人類学がありました。人類の様々な文化の違いを比較し、人類の文化に共通する問題を研究しようとしている学問分野です。レビ=ストロースなどによるニューギニア原住民の習慣に関する研究などが行われました。

20世紀の初めごろ、ヨーロッパでは、優生思想が広まり、人種や国籍による、人々の知的能力の違いなどが研究され、アフリカの黒人、ヨーロッパの白人、アジアの黄色人種などに見られる共通した特徴に関する分析が行われ、その結果から、黒人の文化、黄色人種の文化、ヨーロッパ系白人の文化について、文化の発展が、黒人文化に始まって、黄色人種の文化、ヨーロッパ系白人文化へと進化したとする、文化進化論が誕生しました。

この研究成果は、分析が精緻でなく、それぞれの人種の代表として選ばれた人々の豊かさ、それぞれの人々が住む国の教育制度の成熟度、それぞれの人々が住む国の経済発展の度合い、などの影響が混在した状況での分析だったため、結論も科学的に導出されたものとは言えませんでした。しかし、その結論は、今でも、私たちの記憶に残されており、無意識に、私たちの思考に影響を与えています。

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